本を速く読みたいと思ったら、最初に「何をどこまで理解したいか」を決めましょう。必要な箇所を探す、概要をつかむ、説明の条件まで理解するでは、適した読み方が違います。速読を試すときも、ページを進める速さだけでなく、読み終わって何を説明できるかを確かめることが大切です。
この記事では、速読についての総説と読書速度のメタ分析を参照し、研究で扱われた範囲と、自分で試せる読み方を分けます。特定の講座やトレーニングの評価、誰でも一定倍率で速くなるという約束はしません。自分の本と目的に合う、時間の使い方を考えます。
結論:理解を保ったまま大幅に速く読むのは難しい
速さと理解を一緒に評価する
Raynerらの2016年の速読と読み取りに関する総説は、理解を保ったまま読む速さを倍増・数倍にするという大幅な改善には慎重な結論を示しています。流し読みは速くなり得ますが、内容を詳しく把握する読み方と同じ結果とは限りません。
自分で確かめる場合は、読後に本を閉じて説明します。例えば架空の本『身近な植物の観察入門』なら、「葉の形だけでは種類を決められない理由」「観察時に確認する条件」を答えてみます。名称を見た記憶と、判断の理由を理解したことを分けられます。
速く最後まで進めても、必要な説明を読み落とし、あとで全体を読み直すなら、目的に使える時間は短くなっていません。読み始めから読後の確認まで含めて考えましょう。一方、目当ての用語があるページを探す作業なら、その場所を見つけられれば目的を達成できます。
読み方は目的に合わせて変えてよい
小説で場面を味わいたい日は、速さの記録をつける必要はありません。資料から日付を探すときには、目次や見出しを使って該当箇所へ進めます。資格の学習で手順を理解するなら、前提と例外を読む時間も予定に入れます。すべての本に一つの読書スピードを求めないようにします。
目的が途中で変わることもあります。概略を知るために読み始めた本で、仕事に関係する説明を見つけたら、その節だけ丁寧に読み直せます。最初から最後まで同じ速度を保つことより、いま必要な理解へ切り替えられる方が実用的です。
| 目的 | 使いやすい入口 | 読後の確認 |
|---|---|---|
| どこに説明があるか探す | 目次、索引、見出しを見る | 必要なページへ戻れるか |
| 話題の概要を知る | 導入と章の要点を読む | 扱う問題を自分の言葉で言えるか |
| 手順や論拠を理解する | 前提、本文、例外を照合する | 条件を含めて説明できるか |
| 作品を楽しむ | 自分のペースで読み進める | 続きを読みたいか、余韻を楽しめたか |
速読について研究で分かっていること
大幅な高速化と、読み慣れる変化を区別する
同じ総説では、読み戻りや頭の中の音声化を単純な悪習慣として取り除けばよいとは扱っていません。言語の処理や読み戻る機会は、内容の理解と関係します。一語ずつ高速に提示する方法の結果も、長い文章を自由に読む状況へそのまま広げないようにします。
この研究の説明を、自分のすべての読書に対する速度の上限と考える必要はありません。ただし、一つの短い課題ができたことと、未知の本を最初から正確に理解できることは違います。主張を見るときは、読んだ文章、測った理解、参加者、練習条件を確認してください。
慣れた話題の本と、初めて学ぶ分野の本でも、読む手間は異なります。後者では、単語の意味を調べたり、前提を確認したりする必要があります。速さの比較をするときは、この違いをそろえないと、読み方の効果と知識の差を取り違えます。
平均速度を自分の合格基準にしない
Brysbaertの2019年の読書速度のメタ分析は、英語を黙読する成人の研究を集め、文章の種類や個人差を扱っています。英語の単語数を使う指標を、日本語の文字数と同じ尺度として扱うことはできません。年齢や言語が違う人へ、そのまま目標を割り当てないようにします。
自分の速度を測るなら、本の種類、文字の密度、予備知識、目的を記録します。図が多いページと文字の詰まったページを、ページ数だけで比べるのは難しいでしょう。外国語の本で語彙を調べる時間も、必要な読書の一部です。
研究を参照する際は、要旨で確認できることと、詳しい実験条件が必要なことを区別します。この記事の数字を使った例は、計算方法を示すための架空の記録です。研究によって検証された日本語読書の合格ラインや、速読法の効果を示すデータではありません。
速く読めるようになる現実的な方法
分からない言葉と前提を整理する
未知の言葉が続く本は、そのたびに読む流れが止まります。同じ用語が繰り返し出るなら、意味と本の中での使われ方を短く控えます。一般的な辞書の意味だけでなく、著者がその章で何を指しているかを確認すると、似た言葉との混同を減らせます。
例として、観察の本で「対生」「互生」が出たら、説明と図を一組で見ます。次の章では、用語を見て前の図へ戻る場所が分かるようにします。暗記する項目を増やすことより、読み進めるために必要な前提を押さえる使い方です。分からないまま速度を上げても、その説明を使いにくくなります。
先に入門的な章を読む、目次で話の順序を見る、関係する図を確かめる方法もあります。知識が足りない部分を飛ばす場合には、戻る必要がある節として印を残します。後ろの章で困ったとき、どこまで戻ればよいかを見つけやすくなります。
読む環境の中断を減らす
速読の訓練を始める前に、読める時間が何で途切れているかを見ます。通知を見る、資料を探す、文字が小さくて拡大し直すといった中断なら、置き場所や表示の調整を試せます。これで処理能力が何倍になるとは言えませんが、読書に使う時間の段取りは変えられます。
紙ならメモと必要な資料を近くに置き、画面なら文字と余白を読みやすくします。一度に多数の設定を変えず、「通知を見ない時間を作る」「参照ページを控える」など、一つずつ試してください。疲れて読めない日に、無理に速度を記録する必要はありません。
中断の回数を記録してみると、本を読む遅さと、読み始められないことの違いが見えます。読む時間を十分に確保しても難しい章は、さらに丁寧に扱ってよいでしょう。読み方の基本は、目的や本の種類から選ぶ記事でも説明しています。
本の読み方|目的別に変える3つの読み方本の読み方は、楽しむ・知る・身につけるという目的で変えられます。物語を味わう読み方、目次から必要な章を探す手順、本文を閉じて説明し手を動かす勉強を紹介。難しい本の疑問の分け方、読み返す場所と読了後の一つの行動まで、速さや冊数だけを目標にせず、自分の用途で選ぶ方法です。makimono.xyz ↗
読まない部分を決める
先に問いを一つ作る
本を開く前に、知りたいことを一文にします。「植物について知る」だけなら範囲が広いので、「散歩で見つけた葉の並び方を記録するには何を見るか」と具体化します。目次を見て、その問いに関係する章と、前提となる説明を探しましょう。
必要な答えが得られたら、すぐ実行できるかを考えます。道具、対象、時期などの条件が分からない場合には、関係する節を追加で読みます。章末の結論だけを見て、本文にある例外や注意を落とさないようにします。目的を絞ることは、必要な条件まで省くことではありません。
問いがない日には、導入を読んで興味のある見出しを選ぶ方法もあります。娯楽として読みたい本を、仕事用の資料と同じ効率で評価する必要はありません。その日に何を求めるかが分かれば、読む範囲の選択をしやすくなります。
飛ばす範囲を後から分かるようにする
すでに理解した説明や、いまの問いに関係しない例は、後回しにできます。ただし、読んでいない節を読了扱いにすると、あとで内容を探すときに迷います。「第2章は概要のみ」「第4章は未確認」と短く残しましょう。本の全体と、使った部分を分ける記録です。
飛ばした節で前提が説明されていると分かったら、戻れば構いません。一度選んだ順序に固定する必要はありません。技術や法律など、条件の確認が重要な本では、本文から切り出した一文だけで判断せず、関連する説明と現行の一次情報も照合します。
速さより大事な「読む量」
時間と読む範囲から予定を作る
読める量は、一回の速度だけでなく、読む機会や本の難しさにも左右されます。毎日必ず読めるという前提で大きな冊数目標を作るより、実際に使える時間と一回の範囲から始めましょう。最初は一節や、短い区切りで構いません。
例えば平日に三回、朝の短い時間を使うなら、読みかけの章へすぐ戻れるようにしておきます。必要な資料を探す時間が続く場合は、先に用意する作業を分けます。小さい区切りを何回読むかが見えると、速さだけを上げようとするより予定を立てやすくなります。
読んだページ数を増やすことが、そのまますべての効果へつながるとは言えません。楽しむ、調べる、学ぶなどの目的と、実際に得られた内容を振り返ります。読書の効果と研究の読み方では、相関と因果や、研究の条件を分けて確認しています。
冊数以外の成果も記録する
全部を読み終えた本だけ数えると、必要な一章を丁寧に読んだ日が記録から消えます。読んだ範囲、気づいたこと、次にすることを短く残せば、目的に対する進み方も見えます。長い書評を毎回書く必要はありません。
架空の観察入門なら、「葉の並び方を二つ区別した」「次の散歩で三枚の写真を撮る」と記録できます。実際に観察して、説明に戻る必要があった箇所も控えます。速く読んだという記録だけより、何を使えるようになったかを確かめられます。
記録を毎日埋めることが負担になったら、週末に見直す方法へ変えて構いません。読む量の目安は、生活や本の目的に応じて調整します。自分が続けられる項目の選び方は、読書記録の作り方も参考になります。
速さを測ってみる
条件をそろえて理解も確かめる
測定は、自分の読み方を振り返るために使います。短い文章を初めて読むときと、内容を知っている文章を読み直すときでは条件が違います。比較するなら、同じ種類で近い難しさの未読部分を選び、目的と表示の設定をそろえてください。
- 未読の範囲と目的を決め、開始位置を控える。
- 時計を見て読み始め、休止や中断があれば記録する。
- 読み終えた位置と、かかった時間を記録する。
- 本を閉じ、要点と重要な条件を自分の言葉で説明する。
- 本を開いて、誤りや読み落としを確かめる。
- 別の未読部分で試し、時間と説明できた内容を比べる。
文字数を数えられる日本語の文章なら、読んだ文字数を経過分で割り、文字数/分という自分用の目安を作れます。架空の例で2,400文字を8分で読んだ場合は300文字/分です。この数字は合格ラインではありません。図の確認や調べものを含めたかも一緒に残しましょう。
一回の結果から倍率を決めない
別の文章で速さが上がっても、文が易しかった、話題を知っていた、短かったなどの違いがあります。同じ文章を繰り返すと内容を覚える影響もあります。一回の結果だけから、訓練の効果や将来の速度を断定しないようにします。
「速くなったが条件を忘れた」「時間は同じだが説明が正確になった」など、時間と理解を並べて見ます。読書スピードの数値が低くても、必要な説明を正しく使えたなら、その目的に合う読み方です。理解を確認する自作の問いも、研究で使う標準化されたテストとは区別してください。
記録を使って、次回は何を変えるかを一つ選びます。先に用語を整理する、目次で範囲を決める、中断を減らすなど、変更と結果を結び付けられる内容にします。速さを追うために、読む楽しさや必要な確認を失っていないかも振り返りましょう。
多読のすすめ|たくさん読むための選び方と記録の残し方多読は、難しい本を我慢して読み切るより、自分が読み進められる本を選び、合わなければ替えるところから始められます。日本語の読書と英語の多読を分け、易しさの確かめ方、短い時間の使い方、途中の本も残す記録を紹介。年間の冊数を競わず、図書館や合法的な公開作品で選択肢を広げましょう。makimono.xyz ↗
短い時間とまとまった時間の使い分けは、次の記事で確認できます。
読書時間のつくり方|忙しい人のためのすきま時間の使い方読書時間をつくるには、空いた時間を待つより読む場面を決めることが役立ちます。すきま時間の書き出し、短時間に向く本の選び方、スマホからの再開、週に一度のまとまった時間を紹介。睡眠や休息を削らず、準備と記録の負担を減らして自分に合う読書習慣を見つける手順をまとめます。makimono.xyz ↗
よくある質問
速読で誰でも何倍も速く読めるようになりますか?
理解を保ったまま大幅に速くなるという保証はできません。文章の種類、知識、目的、測る理解度で結果が変わります。ページを進める速さと、内容を説明できることを一緒に確かめてください。
頭の中で声にすると遅いので、やめた方がよいですか?
音声化をすべて悪い習慣と決めないようにします。読む過程で言語の処理が関係し、未知の説明を理解する場面もあります。抑え込むことだけを目標にせず、読み終わった内容を説明できるか確認しましょう。
全ページを読まずに読了にしてもよいですか?
記録の基準は自分で決められますが、必要な章を読むことと全体を確認することを分けると便利です。飛ばした範囲や概要だけ見た部分を残せば、次にその本を使うときに判断できます。
日本語の本は一分に何文字読めれば合格ですか?
この記事では一律の合格値を設けません。英語の単語数を日本語の文字数へ直接置き換えず、自分の本と目的に合う条件で測ります。文字数を数えられない本なら、読んだ範囲と時間、説明できた内容を記録してください。
速さは、読む目的と理解度と一緒に見ましょう。
必要な場所を探す、概要を知る、丁寧に理解する読み方を使い分けます。
語彙や前提、読む環境を整え、飛ばした範囲を残してください。
測定は自分の読み方を見直す目安として使い、倍率だけで評価しないようにします。
